水でサボテンを育てる

「植物があると生活にゆとりが生まれて良い」とよく聞くけど、実際に栽培するとなると意外にハードルが高い。育ててみたいと思いつつ最初の一歩が踏み出せない人や、挑戦したもののすぐに枯らしてしまった人はかなり多いはずだ。

そんな人にはサボテンの水栽培をおすすめしたい。最初の準備が少し面倒だけど、普段の手入れがとにかく楽で、枯らす心配がほとんど無いやり方を紹介する。

はじめる前に

「サボテンを水で育てる」と聞いたとき、ほとんどの人が「根は腐らないのか」と疑問に思うことだろう。知らなくても大丈夫だけど、知っていたほうが育てやすくなるので、なぜ根腐れが起きないのかを簡単に説明する。

根腐れは多くの場合、酸素の欠乏によって引き起こされる。例えば鉢植えの植物に水を与えすぎると、土から酸素が押し出されて酸欠状態となり、根腐れを引き起こす。

逆に言うと、水栽培に適応している、酸素が足りているなどの条件が整っていれば、水の中でも根は腐らないということだ。今回のやり方では、定期的に水を入れ替えることで酸素を供給し、根の健康を保っている。

いるもの

やりかた

まずはサボテンを鉢から取り出して、根に付いた土を水で洗い流す。この段階で伸びているのは土に適応した根で、残念ながら水栽培には向いていない。水に適応した根を伸ばしてもらうために、写真を参考に根っこをできるだけ短く切断する。

根を切ったら、新聞紙で包んで10日間ほど日の当たらない場所に置いておく。ここでしっかり水分を抜くことで、より太く頑丈な根が伸びるようになる。彼らの将来のためなので、心を鬼にして取り組もう。…とは言っても負担がかかることには違いないので、萎んだり変色したりしていないか、ときおり様子を見守りながら作業を行うこと。

サボテンを十分乾燥させたら容器にセットし、根に水がぎりぎり触れる程度に水位を調整する。その状態で日の当たらない場所に置いておくと、一週間もしないうちに根が伸びてくる。2日に一回のペースで水を交換しつつ、根の成長をじっくりと待とう。根が3~5cmに伸びたら、いよいよ明るい室内での栽培開始だ。

もし一週間経っても根が伸びない場合は、再び水抜きからやり直すこと。ここがもっとも難しい作業だけど、水栽培の一番の醍醐味でもあるので、辛抱強く取り組もう。

根がしっかり伸びた後の管理方法は非常にシンプルだ。直射日光の当たらない場所に置き、2~3日に一度のペースで水を交換するだけできちんと育っていく。根が7cm未満のときは半分より上、それ以上に伸びたら根の真ん中より下に水位を調整しよう。上の写真は水位が高すぎる状態を再現している。この状態が長期間続くと腐ってしまうので、必ずこれより低い水位を保つこと。

サボテンの選び方

ホームセンターなどで販売しているような一般的な品種であれば、基本的にはどれを選んでも大丈夫。サイズが小さすぎるものや、トゲが鋭利すぎるものは扱いにくいので避けること。水を好む品種のほうが水栽培への適応が早いので、迷ったらサボテンの特徴などにも注目しよう。

容器の選び方

水栽培用の容器は大きく分けて「セパレート型」と「一体型」がある。

セパレート型とは2つのパーツで構成されている容器で、サボテンに触れることなく水を交換できるという特長がある。構造がシンプルなので洗いやすいというメリットもあり、初めての人にはこちらのタイプをおすすめしたい。

一体型は水交換の際にサボテンに触れる必要があるので、トゲが刺さったり、根が折れたりする可能性がある。構造が複雑なので、洗ったり乾かしたりするのに少し手間がかかるものも多い。一方、セパレート型と比べてデザイン性が高いものが多いので、慣れてきたらこっちを試すのも良いだろう。

個人的におすすめなのは「KINTO」のフラワーベースだ。皿と本体が分かれているので手入れがしやすく、サイズも2種類あるのでだいたいのサボテンにフィットする。扱っているお店が多いのもポイントで、実物を見て購入しやすいのが嬉しい。もちろんネットショップでも気軽に入手できる。

「成功するか分からないのに、わざわざ専用の花瓶を買うのは…」という人は、余っているガラス瓶で試してみるといいだろう。小さいサボテンであれば、コップや一輪挿し用の花瓶などでも育てることができる。専用の容器を買うのは水栽培に慣れてからでも決して遅くない。

オプション

・液体肥料

無くてもいいけど、あると以外に助かる液体肥料。まずは肥料無しで育ててみて、必要性を感じたら導入してみると良いだろう。使いすぎると藻が発生しやすくなるので注意すること。

・ネオコール

炭でできた土のようなもので、汚れを吸着して水質の悪化を防いでくれる。繰り返し使えるのでお財布にも優しく、おまけにインテリア性もアップするという優れものだ。しつこく藻が発生するときなどに試してみると良いだろう。ホームセンターのほか、百円ショップなどでも似たような商品を購入可能だ。

・油性マジック、貝殻、化粧石

水栽培の容器はシンプルなデザインのものが多いので、もしかすると物足りなさを感じるかもしれない。そんなときは油性マジックでイラストを描いたり、貝殻や化粧石を入れたりして、自分なりのコーディネートを楽しんでみよう。耐水シールで飾り付けても良い感じだ。

困ったときは

・藻が発生した

水の交換が遅かったり、日光が強く当たる場所に置いたりすると藻が発生することがある。わりとよくあることなので慌てる必要はない。根と容器に付着した藻を水で洗い流し、置き場所を変えるなどして対処しよう。

・根が腐った

水栽培中、たまに根が腐って(溶けて)しまうことがある。水位が高すぎたり、水抜き期間が足りない場合に根腐れが起こりやすい。再び根元ギリギリまで根を切断し、水抜き作業からやり直そう。

・虫が発生した

土を使う鉢植えと比べて虫害のリスクは低いものの、それでも出るときは出る。虫を見つけた場合は速やかに綿棒で取り除き、薬剤を散布するなどして対応しよう。

・旅行に行きたくなった

植物を育てていると必ずぶつかる問題のひとつに「長期不在時の管理」がある。

一週間程度なら水を替えなくても枯れることはほぼ無いので、ひとつの目安にしてほしい(藻は確実に発生するので帰宅後は速やかに処理すること)。水質の悪化を抑えるため、出発直前に水を替える、ネオコールを使うなどできる限りの対策を施そう。

世界最小のオアシス

ここまでしっかり読めばもう怖いものはない。さっそく町に出かけて、サボテンや容器を買ってこよう。お部屋にサボテンを飾ったら、すくすくと伸びていく根を毎日観察してみよう。目で見るだけで飽き足らなければ、写真を撮ったり、スケッチしたりして楽しもう。運が良ければ、トゲだらけの見た目からは想像できないほど可憐な花を咲かせることもある。

手のひらに収まるような小さな存在だけど、水で育てるサボテンはあなたをとっても愉快な気持ちにさせてくれるはずだ。

この記事を書いた人

パルハラ

雑貨のバイヤーをしています。

妻は漫画家で、二人とも不安定な職業に就いているためか親類からは「博打夫婦」と恐れられています。